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INTERTop

最後のDOSマシンは期待と幻滅の中に消えていくのか?


待ち望まれていたオアポケ3の後継機に集中した不満とは

発売前から噂の絶えなかったオアポケ3の後継機は、INTERTopという名前でデビューしました。
製品が発売され、早速発売日に購入したところ、ハード面で以下の問題点が明らかになってしまいました。

ちょっと信じられない仕様に、愕然としてしまいました。

この問題点は、INTERTopモデル20やパワーアップキットでも、いまだに解決されていないままです。

また、ソフトの面で、標準添付のソフトはユーザーに不満の山を築き上げました。
DOSソフトを使いたいユーザーは惜しげもなく使いにくいシェルやPIMを消したのではないでしょうか。

発売当初に吹き出た不満のうち、すぐに解決できる物について、富士通の担当部署はユーザーの声に真摯に耳を傾け、すぐにモデル20という形で回答してきました。

この誠意ある姿勢は、信頼できるメーカーであるという印象を強めるものでした。
しかし、ぼくはモデル20ですっかり醒めてしまいました。
必要なのは、もっと抜本的な改革です。
エディタはVZ相当を搭載、シェルはタスクスイッチ可能に、初心者でも簡単にNIFTYに参加できる環境を、ちょっと大き目のHTMLでも普通に読めてもっと快適な操作感のWebブラウザを、という願いに答える技術力は富士通にはなかったわけです。
使い物にならない低機能のソフトの欠点を少しばかり直しても、決して良いものにはならないのです。


消えた試作機

オアポケ3の後継機は、INTERTop発売前から何度も噂が出ていました。
実際、INTERTop発売のずいぶん前に、試作機を見たという声も聞かれていました。
開発は当初FM-Rベースで行われ、単三2本で動くモノクロ試作機ができていたと聞きます。
ところが、この開発名Geneseeは発売されないままに、現在のINTERTopへと仕様が変更されてしまったようです。
このときに、

といった変更が行われてしまったようです。
これらは、DOSマシンとして使い倒そうとするユーザーにとっては、本末転倒の仕様変更とみなされて、HP200LXやモバイルギアのような形でのユーザー主導の成功からは遠い物となってしまったのだと思います。


INTERTopには何が望まれ、どこが失敗だったのでしょうか?

INTERTopの大きさからすると、電話帳やスケジューラよりも、テキストを生み出すための文房具を指向すべきなのは言うまでもありません。そのためのキーボード、そのための大画面のはずです。
NIFTYのようなパソコン通信のようにテキストだけで完結する世界にはDOSと単三電池で長時間駆動するテキストエディタマシンが最適です。
モノクロ液晶画面でも、単三2本で10時間以上使えるPCであったなら、文房具として重宝するものになったでしょう。この場合、DOSというプラットフォームの選択は、テキストエディタによる知的生産には最適なものとして歓迎され、どこでもテキストエディタの文化が花開いたことでしょう。
けれど、INTERTopでのカラー化やインターネット指向は、最も大事な、言葉を綴るための基本機能を損なってしまっています。これがINTERTopの最大の失敗です。
カラー化やインターネット指向を貫くのなら、SONYのVAIO505シリーズ程度のスペックとWindows95の採用、WZエディタやNetscapeNavigatorのようなブラウザを具備しなければなりません。それだけの機能が、たとえば個人でホームページを作り、インターネット上で活動するためには必須です。
もしも、カラー化やインターネット指向というデザインコンセプトを押し進めるなら、Geneseeとは違った形の道、mobioNXやVAIO505のようなプラットフォームを選択すべきだったのです。
もちろん、DOSベースでそれに匹敵するものを開発してくれればもっと望ましい展開なわけですけれども、現実にはそれだけの実用性を具える技術力が富士通にはなかったわけです。


ユーザーとしての使いこなし

さて、発売前からNIFTYのFOAU2では専用会議室が設置され、INTERTopがOASYSそのものではないことが判明した今でも、INTERTopの情報はNIFTYのFOAU2の会議室がもっとも充実しています。
メーカーはインターネット上の情報提供富士通INTERTop WORLDを念頭においているようですけれど、初代およびモデル20のWebブラウザの実用性の低さからすると、INTERTopユーザーが全員INTERTopでインターネットに積極的に参加すると考えるのは愚かです。
実際、遅いだけなら我慢すれば良いのですが、小さいHTMLファイルしか読めないというのは根本的に設計が間違っているとしか言いようがありません。
Webブラウザは別途WebBoyを購入したかBobcat-Jなどを導入しているのが普通の感覚だと思います。

ここで、FOAU2の会議室でのぼくの発言内容のうち、いくつかをまとめておきます。

見にくい画面を実用的に使うための手法。

フォントのボールド化
フォントをツール(FONTCNV.EXEとFUTOME.EXE)でボールド化する。 ぼくは以下の方法で、文字を太めに変えて運用することによって対応しました。
  1. c:\fjfontディレクトリを作り、d:\fjfont以下のファイルを複写する。
  2. Natriumさんのふぉんと昆布で、ANK16.FNT,ANK19.FNT,KANJI16.FNTを$FONTX2形式に変換する。
    fontconv c:\fjfont\kanji16.fnt tmp1.fnt
    (このソフトは、FPCUPRO:LIB7:#173にアップされています。)
  3. まるはさんのFUTOME.EXEでフォントをボールド化する
    futome tmp1.fnt tmp2.fnt
    (このソフトは、FHPPC:LIB15:#378にアップされています。)
  4. Natriumさんのふぉんと昆布で、$FONTX2形式から、MS-DOS/Vのフォント形式に変換する。
    fontconv tmp1.fnt tmp3.fnt
  5. 成功したらフォントファイルを上書きして変更する
    copy tmp3.fnt c:\fjfont\kanji16.fnt
  6. フォントの読み込みをc:\fjfontからするようににc:\confiyg.sysの設定を書き換える
    DEVICEHIGH /L:2,22336 =D:\DOS\JFONT.SYS /P=c:\FJFONT\ /U=0
  7. [Ctrl+Alt+Del]を押してリブートする
これで、NIFPやVZで太めの文字を読めるようになります。日中、完全に見えない状態から、なんとか見えないこともない状態まで改善しました。

タッチパネルはずし
ハード改造!失敗して破損は覚悟の上。 ぼくは初代INTERTopを分解してタッチパネルを液晶前面からはずしました。
INTERTop分解、タッチパネルはずし写真集
INTERTop写真

これにより画面の視認性は格段に向上しました。出張時に携帯し、直射日光の差し込む新幹線の窓際で使用しましたが、画面が見えました。キーボード部分に陽差しが当たる状態で、バックライトを低輝度にしても文字が読めました。
低輝度で使用しても大丈夫なため、当然駆動時間も伸びました。
ところで、タッチパネルを液晶前面からはがしたというのは、ぼくのINTERTopの運用形態が決定的に変わってしまったことを意味するようです。
標準のメニューを中心の運用から、DOSのファイラー(KL)中心の運用へ、そしてお絵描きやタッチしてのログ読みからDOSノートPC風の通信・文字入力マシンへ。
そうして使ってみると、これはDOSマシンそのものなわけです。液晶画面を360度回転させることもないし、ホームページ画面をタッチしてリンクをたどることもなくなりました。
TP220のようなDOSマシンとしての使い道というのは枯れていてとても良いです。
良いのですけれど、苦心して使い勝手の改善に熱中した経験も、内蔵ソフトの使い道を摸索したことも、あまり意味がなくなってしまいました。
タッチパネル外しで、ぼくにとってINTERTopは最高のDOSマシンに生まれ変わって本来とても嬉しいはずが、逆になにか失われてしまったみたいでさみしい気持ちです。
親指シフトキーボードの小型DOSマシン−それはずっと望んでいたものだったのですけれど、ワクワクしません。こんなものだったらもっとずっと早く、もっと出来の良いものができていたはずだと思ってしまうのです。

電子ブック(EB)形式辞書の利用

そのままでは使えないです。いつでもどこでも文章をつくれるマシンで辞書をひくことをもっと考えて欲しい、と思います。

まず、ぼくが使っているデータのサイズですけれども、たとえば以下の通りです。

岩波国語辞典第五版11,790,522 Bytes
研究社新英和中辞典第6版&研究社新和英中辞典第4版36,902,746 Bytes
平凡社百科事典マイペディア22,137,185 Bytes
朝日現代用語知恵蔵11,924,112 Bytes

ぼくは、富士電気化学の160MBフラッシュを使っています。もちろん、TYPEIIのPCカードです。秋葉原の若松通商で16万8千円で購入しました。
つまり、上にあげた辞書ファイルをすべていれても、まだ半分以上空いている、というわけです。
エプソン販売の85MBにも全部入るかな。持っているけれど試していません。
辞書は「辞・典・盤」として1枚のCDROMに入って書店で販売されていました。以前購入したときは、税込み定価9800円でした。今は新しい版がでています。
もちろん、著作権法に定める範囲を越え、無断で複製、引用することは禁じられています。辞書データをコピーして配ったりするのは違法行為ですね。
一部のソフトにあるような、理不尽な使用許諾契約で本来適法なこともできなくなっていたりはしないのは救いです。個人で使用するためにディスクにインストールすることすらできない製品は、契約をせずに返品するのが吉でしょう。
このCDROMに同梱のWindows用ソフトでは、このCDROMが入っているかどうか起動時にチェックしています。携帯マシンでの使い勝手は考慮されていません。
もちろん、これはINTERTOPでの使い勝手を考えて販売されているわけではありません。DOSの検索ソフトは別途用意しなければなりません。また、ファイルサイズもそのままだと大きめなので、圧縮辞書に変換した方が便利です。
設定が必要なのは標準の英和辞書にくらべてデメリットかもしれません。けれど、好みの電子ブック形式の辞書を利用できることは大きなメリットです。フラッシュの空き容量さえあれば何種類でもいれられますし、持ち運びに困ったりCDROMを差しかえる手間にうんざりしたりする心配は不要です。文章を書いているその環境で、いつでもどこでも辞書をひけるということは、ある種の至福ではないかとさえ思っています。

以下に手順を示します。

CD辞書検索プログラムDIC V0.23がFEYETOOLのLIB2にあります。
偉大なMIYAZAKIさんと、そして圧縮辞書の作成機能つきでコンパイルしたやえさんに感謝です。
FEYETOOL− LIB 2 ■FSW CD-ROM関連 総数 :47 登録数 :47 −
48 HBF01272 94/06/07 143654 DIC023LE.LZH CD辞書検索 V0.23 DOS汎用版
ぼくはCDROMドライブをつなげたWindows95マシンのDOS窓で設定しました。
CDROMドライブがEドライブになる環境なので、
diclsic2.exe -Wd:\iwakoku -fE:\IWAKOKU\DATA\HONMON
        ↑作成する圧縮辞書 ↑電子ブック(EPWING CD-ROM)のファイル
として、圧縮辞書の作成を行いました。そしてできたファイルが前述のサイズになったわけです。
ディスク圧縮ソフトやファイル圧縮ツールで圧縮するのとは違いますので、トラブル時に全ディスクが読めなくなったり、検索に時間がかかったりするような心配は不要なのが大変ありがたいです。
この圧縮辞書をフラッシュPCカードに入れておくわけです。
もちろん、容量を気にしなければ、そのままファイルをフラッシュにいれても全く問題ありません。
著作権についての枝葉の議論が好きな人は、インストールのためのファイルの圧縮に問題がある可能性を指摘するかもしれませんけれど、ここではふれるつもりはありません。正当な対価を払って購入した辞書データは、使ってあげてこそその本来の意味がある、程度にここでは軽く流しておきます。
さて、実際に辞書を利用するときは、
rem ----------IWA.BAT
c:\usr\bin\dic.exe -fF:\IWAKOKU %1 %2 %3 %4 %5 %6 %7 %8 %9
rem ----------IWA.BAT
のようなバッチファイルを使っています。
VZで文章を書いていて、ふと辞書をひきたくなったら、Alt+EやESC-Eのようなキー操作でVZのDOSコンソールを出して、
IWA 言葉
のようにして辞書をひき、SHIFT+ESCで検索結果を参照します。必要ならコピー&ペーストして使用しています。
このへんの使い勝手は好みで設定すれば良いと思います。VZマクロを使えばとっつきやすいインターフェイスにできると思います。
いかがでしょうか?
巷に携帯電脳の商品が溢れる世の中になって嬉しい限りですけれども、文章を書くのに好みの辞書もひけないようでは、ただの閲覧機器だとぼくは思っています。
INTERTOPはその面でも、開かれた使い道を提供している優れたマシンですね。
使えるキーボードに大きな画面、大容量データの自由な参照は、文房具としての携帯電脳にはぜひ欲しいところですね。


INTERTopの次モデルのありかたは?

その美しい外装のデザインで当初好評だったINTERTopがその後伸びていないように見受けられるのは、決してWindowsCEを採用していないからではないと思います。

携帯電脳は、本来もっとも行動と密着した道具です。

無意味なMS信仰とも、見せかけだけの外見でもなく、実用性がまず求められるものだ、と思います。
ZAURUSに右にならえのペンマシンがすべて滅び去ったように、MSブランドによりかかったWindowsCEマシンが全機種まるで使い物になっていないように、真に道具としての性能を追求しない携帯電脳は滅びる他はないのです。

富士通は、98年6月に発売されたパワーアップキットにより、不満の大きかったブラウザを抜本的に変更してきました。
これは大変評価できる対応です。
パワーアップキットが普及すれば状況が変わる可能性があります。ハードの改良をした次モデルが出るなら、大いに期待したいと思います。


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文市(あやち)=青野宣昭