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紅茶の淹れ方

紅茶を淹れるには、なにに気を付け、なには気にしなければよいのでしょうか。


一杯のおいしい紅茶

紅茶の消費の盛んなイギリスでは、淹れ方も一般的な知識となっていて、 さらに個人的なこだわりもあるようです。
有名なものでは、ジョージ・オーウェル(George Orwell)のエッセイ(「イヴニング・スタンダード」1946年1月12日号のエッセイ。 The Collected Essays, Journalism & Letters of George Orwell収録)があります。
そこでは、以下のような点が譲れないとして挙げられています。

  1. インド産かセイロン産の葉を使用する
  2. ポットで入れる
  3. ポットはあらかじめ温めて
  4. 紅茶は濃いことが肝心
  5. 葉はじかにポットに入れる
  6. ポットをやかんのそばに持っていく
  7. 紅茶ができたあと、ポットをよくゆする
  8. マグカップをつかう
  9. ミルクは乳脂肪をとりのぞく
  10. 紅茶から注ぐ
  11. 砂糖を入れてはいけない

ジョージ・オーウェルは、これらのうち2点は大方の賛同を得られるだろうが、少なくとも4点は激論の種になるだろう、と書いています。面白いですね。


優先順位

では、こういった様々な紅茶の淹れ方のコツのうちのどれが優先順位の高い条件なのでしょうか。
ぼくの考えでは、

の順ではないかと思います。


茶葉の量

茶葉の量ですが、「スプーン人数分+1杯」の意味が分からないというのは、よくある話です。
もっと簡単な話で、お湯の量に比例して、お湯ティーカップ1杯分につき3gとしたほうが分かりやすいのではないかと思います。
ティーバッグなら、カップ一杯のお湯につき1つを使うのが適量です。つまり急須なら二つから三つほどティーバッグを入れる勘定です。
カップにティーバッグを入れて沸騰していないお湯をさしたり、カップに茶漉しを置いて上からお湯を注ぐのは、紅茶の美味しさの全てを逃しているので、やめましょう。
カップに添える砂糖を入れるためのコーヒースプーンで茶葉の量をはかっても3gにはならないと思います。ここは誤解のもとでしょう。


スプーン1杯何グラム?

ティースプーンといっても色々な大きさがあります。
「スプーン人数分+ポットのために1杯」と聞き、その通りにやってもうまく紅茶を淹れられない場合、一度茶葉の量を正確にはかることをおすすめします。
実は、市販のティースプーンで茶葉をよそっても、決して3gにはなりません。
ティースプーンと茶葉の量
スプーン写真


茶葉の種類による時間の違い

茶葉をカットした大きさ(グレード)の違いによって、ティーカップ一杯の紅茶を淹れるための茶葉の量と浸出時間が変わってきます。
OP(オレンジペコ)タイプですと、3グラムを5分、BOP(ブロークンオレンジペコ)タイプだと、2.5グラムで3分、CTC(茶葉をCTC機で押しつぶし・引き裂き・ひねり丸めたもの、顆粒状に見える)加工による茶葉なら2グラムで1分半程度を目安にして、慣れたら好みで調節すると良いでしょう。
また、最低小ポット(普通の大きさの急須)一杯分、つまりティーカップ2杯半を淹れるようにしないと、おいしく淹れるのはむつかしいです。

左がOP、右がBOPです。
OPとBOPの写真


浸出時の湯の温度

湯の温度ですが、これは基本的に高い方が良く出ておいしいと思います。
急須を湯であらかじめあたため、沸騰している湯を急須に入れるのもそのためです。
逆にいえば、カップや牛乳を暖めることはこの目的には不必要だということです。
紅茶液を茶葉から浸出する最初の3分間のお湯の温度は、とても重要です。
ポットの材質も、あまり急激に湯温が下がる材質だと出にくいので、保温のきく材質が良いでしょう。
普通の日本茶の急須あたりが適していて、おすすめできると思います。


ポットに注いだ熱湯は何度?

紅茶液の浸出には、高い温度の湯が必須で、これが煎茶の淹れ方と違うため、紅茶を美味しく淹れる習慣が根付きにくくなっているように思います。
保温機能付電気ポットで95度に保たれたお湯では温度が低すぎます。
実は、やかんでグラグラと沸騰しているお湯を使っても、まだ温度は低すぎるのです。
ポットに注いだ熱湯は何度?
温度計写真


湯の空気含有量

水については、空気を含んだ水のほうがおいしく紅茶が出ると思います。
水道水に、発ガン物質が含まれているかどうかは紅茶の味とは無関係だと思います。
汲み置きの水や、PETボトル等に入れたミネラルウォーターの場合は、 よく撹袢して空気を含ませると良いと思います。

空気を含ませるために、勢いよく水道から水を汲み、沸騰しはじめの段階のお湯を使うようにして、 お湯を急須に入れるときも30cmくらいの高さから注ぐ、といったような小技も、 ぼくはよく使いますが、それほど大差ないと思います。


茶葉の保存

紅茶は保存がききますが、湿気のあるところに放置しておけば、味は落ちると思います。
2年以上使わずに放置した紅茶が、いくら高い紅茶だからといっても、湿気でおいしくなくなっている ということはありがちな話です。
どうすればうまく保存できるか、ということは考えるだけ無駄で、どんどん消費して使いきってしまう 以外に適切な方法はありません。


渋くならないようにうまく淹れる?

渋くならない淹れ方というのは明白な失敗です。
渋味は紅茶の美味しさの大切な要素ですから、色と香りが出て渋味のない淹れ方ではまったく話になりません。
渋味、というより口のなかが引き締まる緊縮感(astringency収斂性といいます。)は紅茶の醍醐味です。
一方、苦みがでるというのは紅茶ではなにかおかしい事態です。
ダージリンのファーストフラッシュで苦みのあるものは、まずい葉です。


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文市(あやち)=青野宣昭